水墨画ノート墨戯その2

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水墨画ノート墨戯その2
 
 水墨画とは中国の唐の時代(6〜8世紀ごろ)に生まれた絵の技法のひとつで唐代の終わり頃画家荊浩が著書『筆法記』の中で水暈墨章の如きはわが唐代に興るとのべていることから、唐の時代に盛んになったと言われています。具体的には墨の濃淡の階調を生かし、絵を描くことをいいます。水墨画は墨を基調としています。しかしながら、墨一色のモノトーンの世界だけでなく、少し色を入れたものも水墨画といいます。水墨画ノート墨戯として作成したページの第2段としてまとめてみました。今回はなぜ水墨画に色彩があるのかというテーマです。よくいろいろな方から水墨画というのは白と黒の無彩色の世界なのに、なぜ色がついている作品があるのか。水彩画のような色鮮やかな作品も水墨画と呼ぶのか。南画と水墨画の違いは?日本画と水墨画の違いは?など素朴な疑問がたくさん聞かれます。水墨画を作成する人や鑑賞する人の参考となるように微力ですが、過去の多くの研究家の論文や文献にある美術研究書の紹介などを交えながら、今回は水墨画の世界感について紹介します。

三原色の考え方
東洋と西洋の色彩感と世界感・三原色

我々は小学校の美術の時間にちょつと色彩について学ぶだけで専門に学ぶ以外色彩学を正式に学ぶ機会はあまりないと思います。まして東洋絵画の色彩理論についてはほとんど学びません。また色彩のもつ品格や序列なども同様です。しかし生活の中で色の名前や色々なしきたり、習慣から色々なことが学べます。例えばひな祭りの人形で随身という弓矢を持っている人形を飾るときは、衣装の違いで右左置く場所が違います。黒い衣装と赤い衣装のお人形があるのですが、向かって右側に黒、左側に赤の随身を置くなどです。実は東洋の色彩感では色に序列があり、この場合黒が四位以上で赤が五位だから赤い衣装の人形が格下なので向かって左に置くのが正式だとかです。本当に細かいことなのですが、実はそのようなルールを知っているのと知らないのでは、絵を鑑賞するのに楽しみ方が違ってきます。また制作する場合でも役に立ちます。色には方位があるなど色の考え方なども東洋と西洋で は違います。そのような訳で東洋の基準で今回は色彩をテーマにページを綴ります。

色には方位がある

なにげなく使う色ですが、色に方位があります。色のもつイメージもそこからきています。まず北を背にして南に向かいます。『天子南面す』天子…皇帝です。皇帝や天皇が都で南に向いて立ったとき左側に見えるのは緑の麦畑と青い海です。これを東として太陽が昇る方向です。また右を見たときに砂漠の向こうに雪をかぶった山が連なります。これは太陽が沈む西です。天子は南に向いていますのでそのまま上を見ると真赤に燃えた太陽があります。これが南で赤です。また自分の立っている大地は中心で色彩で言えば黄色です。その下の地の中は暗黒な世界つまり玄です。方位としては北側になります。ここにある中国の地図を180度回転して見るとまさに東洋の世界感です。すでに5千年前からこのような世界感と色彩感があったのです。ヨーロッパではわずか5百年ほど前に天動説だ地動説だと騒いでいた世界感から比べるとはるかに合理的です。 都を作るときにそれぞれの方位に門を作りその守護神を祀りました。

南は空ですから空を飛ぶ雀(鳳凰をイメージします)…赤だから朱雀…朱雀門

東は海ですから龍です。これだけが想像の生き物…青だから青龍…青龍門

西は山で棲む動物で虎を置きました。…白だから白虎…白虎門

北は地の中を司る生き物亀または蛇です。…黒だから玄亀…玄亀門

唐代より以前の中国の位置関係

この地図は中華思想を表したものです。中国が中心として南は蛮族東は夷族と他民族と分けて表したものですが、色彩の発想も同じ考え方です。中心が黄色または金色です。

このように都の四方にその方面を代表する動物をあてはめ、外部の侵入者を防ぐ目的で兵を置き、守護神を置いて都の警備をしたのです。日本でもまったく同じように作られています。また横浜の中華街にある四方の門の色も同様に西の門は白く・東の門は青く・南は赤く塗られています。実はこのようなしきたりやルールはつい最近まで厳格に守られてきましたが、西洋の考え方や教育が上ということ、また標準ということですべてこのような知識が捨てられてしまったため、混乱があるのです。少なくとも明治〜昭和の教育で失ったものは大きいはずです。例えば地図に置き換えて見るとよくわかります。現在の国土地理院の作成した地図はすべて上が北です。これは明治に西洋のルールを導入し旧日本陸軍が作った地図が基となっているので上が北ですが、江戸時代以前の絵地図は必ずしも方位は限定されず現在の見ている位置から作られているのと同じです。絵画や文献をこのように一つの概念で固定して見ると事実が見えてこない場合があります。色々な形の中である程度訓練が必要です。

ものごとには陰と陽がある

東洋の世界感の中に忘れてならないのは、物事にすべて陰と陽があるということです。この方位図に併せて太陽と月となどに代表する二つの合い反する物事があります。紙の表と裏・男と女・昼間と夜・生と死・白と黒そのほかたくさんのものがあります。東洋の考えかたにこの陰と陽が大事な役割を担っています。陽は陰より上か、嫌われるのは陰かなどという考え方でなく同一です。一つが欠ければもう一つもありません。ですので水墨画では影を描きません。影は刻々変化するものであり、水彩画との大きな違いは影の処理かと思います。また色彩の考え方として絵の中の一部として捉え色味は部分的に使います。多色で彩色する場合でもあまり色数は使わないことが多いようです。

ここでわかったこと

水墨画に色彩を取り入れるのは自由、但し陽と陰があり、主題として作品の雰囲気が変わるような色使いはできない。あくまで色彩は補助的なもので主題を浮きださせるものである。彩色された作品は、あくまで墨の主張を壊さない程度とすべきである。色彩には色味がありそれぞれ色のもつ意味がある。

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